「任侠もの」が定額ネット配信で人気の理由

Netflix、Amazon プライム・ビデオ、Huluなど、気づけば世の中にあふれているネット動画配信サービス。時流に乗って利用してみたいけれど、「何を見たらいいかわからない」「配信のオリジナル番組は本当に面白いの?」という読者も多いのではないでしょうか。本記事ではそんな迷える読者のために、テレビ業界に詳しい長谷川朋子氏が「今見るべきネット動画」とその魅力を解説します。
今回紹介するのは任侠ドラマ『日本統一』です。

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 もともと、パッケージ用のいわゆるVシネマとして制作された作品ですが、今年に入ってNetflix、Hulu、Amazonプライム・ビデオ、U-NEXT、FOD、dTVといった定額制の大手配信プラットフォームを一挙に網羅、人気コンテンツとして注目されています。

■Vシネファンも納得の役者陣が勢ぞろい

既存のVシネファンも納得の役者陣がそろい、筆者のような入門者にも「試しに見始めたらやめられない」、わかりやすいストーリーが売りです。とはいえ、好みが分かれるジャンルのヤクザもの。そもそもなぜ今、この作品に光が当てられているのでしょうか。その理由を探ります。

 『日本統一』のタイトルにたとえピンとこない場合でも、Vシネファンでなくとも、演じる役者から入り込める余地があることがポイントです。

任侠映画を牽引してきた哀川翔さんや千葉真一さんが重要な役どころを押さえ、Vシネの帝王と言われる小沢仁志さんも登場シーンから存在感を放ち、梅宮辰夫さんや津川雅彦さんといった大御所も登場します。

Vシネは「キャスティングが肝」と言われているそうですが、ここまでそろえることができた理由について製作するオールイン エンタテインメント企画部の角田陸氏が解説してくれました。

 「小沢仁志さん、白竜さん、哀川翔さん、竹内力さんは『Vシネ四天王』と言われています。任侠映画やVシネマから活躍の幅を広げてきた役者さんは予算も少なく、撮影時間も限られたなかで、一発勝負で魅せる演技を培われてきており、独特の危ないオーラの醸し出し方は逸品。その方々がいかにご出演されているかで作品の売れ行きが左右されます。だから、キャスティングにはつねにこだわっています。そして、『日本統一』の場合はキャスティングに対する力の入れ方が半端ない理由がもう1つあります」(角田氏)

 その理由を説明してもらう前に、肝心の主役をご紹介しましょう。

■『アウトレイジ最終章』でも同じバディ役

本宮泰風さんと山口祥行さんのお2人がバディを組み、主役に抜擢されています。お二方ともに映画、ドラマなどで活躍する実力派俳優で、以前から三池崇史監督作品にも出演し、北野武監督作品の『アウトレイジ 最終章』では同じくバディ役です。このお2人が『日本統一』の主役であることに意味があると言います。

「『Vシネ四天王』に続く『ネオVシネ四天王』と呼ばれているのが中野英雄さん、的場浩司さん、そして『日本統一』の本宮泰風さんと山口祥行さんです。Vシネ業界は結束力も固く、『本宮さんと山口さんを任侠スターとしてさらに活躍してもらいたい』という役者さんを含めて業界全体で強く願っていたことから、『日本統一』をお2人のバディムービーとして製作された経緯があります。そういう意図もあったため、これに賛同したVシネレジェンドの役者さんが多くご出演されています」(角田氏)

 さてストーリーはというと、原作なしの完全オリジナル。舞台は横浜から始まります。本宮泰風さん演じる氷室蓮司と、山口祥行さん演じる田村悠人の不良の2人は、地元ヤクザを解散に追い込んだことから命を狙われ、哀川翔さん演じる安西組の若頭・秋本の手引きで神戸へ逃げることになります。

その神戸から2人は巨大組織・侠和会の中で極道の道を生きることになり、侠和会が目論む“日本統一”の実現に向けて、トップにのし上がっていく様子が描かれていきます。話数が進むごとに舞台は全国各地に広がっていき、シノギを削るヤクザ役のさまざまな役者陣が次々と登場するのも見どころの1つです。

 現在、30話まで製作されていますが、まだ完結していません。“日本統一”までの道のりが1話90分前後でじっくり進んでいきます。

実は今、『日本統一』だけではなく、任侠ものが続々と作られています。Netflixではジェレット・レトさん主演で浅野忠信さん、椎名桔平さん、大森南朋さんらが出演する『アウトサイダー』、Amazonプライム・ビデオでは極道とグルメを組み合わせた『紺田照の合法レシピ』がまさにそう。7月クールの民放ドラマではBSジャパンで刑務所が舞台の『極道めし』が放送中です。『日本統一』に出演する小沢仁志さんもキャスティングされています。映画も今秋、遠藤憲一さんが元ヤクザの探偵役で主役を務める『アウト&アウト』が公開されます。

■「定額制配信」時代に起こった任侠バブル

このように作品の出口に広がりをみせているのは「定額制サービスの場合、試し視聴がしやすい。配信の時代を迎え、手を出しにくかったジャンルの作品が気軽に視聴できるようになったことが大きいのでは」と、オールイン エンタテインメントのコンテンツ事業本部部長の鈴木祐介氏が分析します。鈴木氏は20年近くにわたってVシネ作品を取り扱っているなかで、視聴者層の変化も感じているそうです。

 「Vシネのパッケージは40~60代の年齢層が購買を支えてくれています。一方、配信では30~50代がメイン視聴者。新しい層も取り込むことができています。これまで90年代の後半にレンタルビデオの普及によってVシネブームが起こり、現在は配信サービスの登場によって任侠バブルとも言える状況です」(鈴木氏)

そんななか、「ヤクザが背中を向けて死ぬ」「組長が夜中に一人でふらふら歩く」のようにリアリティに欠ける作品もあるようです。それに対して『日本統一』は主役の本宮さんをはじめVシネを知り尽くした各役者陣から脚本や現場の動きについてアイデアが出され、“ヤクザの基本のキ”が徹底されています。これに加えて、ヤクザ組織の徹底したタテ社会や他のシマとの交渉術、抗争戦略なども描かれているのである意味ビジネスドラマのように楽しめることも特徴です。

 オールイン エンタテインメントのコンテンツ事業本部で国内/海外運用を担当する鈴木雄太氏は「本格派でもありながら、見やすさもあるということで、配信プラットフォーム各社に導入してもらっています。今年6月から配信が始まったHuluでは邦画ランキングの上位に入っています」と説明します。

日本統一』のいかにも男気のある仕草や人生観などはまるで90年代当時のドラマを見ているようで、時代と逆行した作品とも言えるのですが、多様性あるコンテンツが受け入れられつつあるなか、新鮮に感じて案外どころか、ハマっている人が続出している理由がわかる気がします。

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