「窃盗症」医療支援が急務 衝動的に万引繰り返す精神疾患

窃盗罪での再犯者の割合がここ約20年で増加している中、金銭的な理由ではなく、衝動的に万引を繰り返してしまう精神疾患「クレプトマニア(窃盗症)」と診断される人の再犯防止が課題となっている。専門家は「刑事罰ではなく、医療や福祉など多重的支援が必要」と指摘している。


「スリルと達成感、罪悪感もある。でも一番はさみしさを紛らわすため」。京都地裁で公判中の男性(64)は、万引時の心境をこう語る。男性は長年介護した母の死をきっかけに、約10年前にうつ病とアルコール依存症を患い、約3年前から書籍の万引を繰り返すようになった。計3回逮捕され、今春に精神科医院で窃盗症の診断を受けた。
弁護士の紹介で、保釈中に京都市内で活動する窃盗症の自助団体に参加するようになった。だが、今年4月、執行猶予判決が出たわずか3日後に、再び万引で逮捕された。「捕まると分かっていたが、盗みたい衝動を止められなかった」。現在は群馬県にある窃盗症専門の病院に入院しながら、裁判を受けている。
■矯正プログラムなく
法務省の犯罪白書によると、窃盗の認知件数は年々減少し、2016年は戦後最少の72万3千件で、20年前に比べて4割減少した。だが、窃盗罪で検挙された人のうち再犯者の割合は、1994年が12・5%だったのに対して、16年は20・1%と増加している。
窃盗症は米国などでは精神疾患として位置付けられているが、国内ではデータの蓄積も少なく治療対象となることは少ない。同省矯正局によると、薬物依存症や性犯罪と違い、刑務所では窃盗の防止に関する確立された矯正プログラムはなく、国内では自助団体や医療機関が再犯防止に向けた支援に取り組んでいる。
依存症のリハビリを行うNPO法人京都マック(京都市下京区)では、ここ10年で窃盗症とみられる利用者が増えたという。参加者は薬物やアルコール依存症の人と一緒に、自身の罪などを語り合うミーティングを重ねる。辻井秀治理事長は「多くはうつ病や摂食障害など他の要因から窃盗を繰り返している。医療的支援と同時に、安心して生活できる環境をつくることが大切」と話す。
刑事司法に詳しい龍谷大法学部の浜井浩一教授(犯罪学)は「万引が病的に常習化した人を刑務所に送っても何の解決にもならない。罰金刑や執行猶予にした上で、適切な治療や福祉的支援につなげることが重要。その人にある問題を総合的に解決していく仕組みが必要だ」と指摘する。

 

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