機密アプリ、犯罪の温床 暗号化で通信内容保護、復元困難

海外で開発された機密性の高い無料通信アプリが暴力団関係者や特殊詐欺グループなどによって犯罪に関する連絡手段として悪用されていることが21日、捜査関係者らへの取材で分かった。暗号化技術を使うことで通信内容を保護し、消去後の復元が困難な点に目をつけているとされ、警視庁が摘発したグループで使われていたことも確認された。警察当局は犯罪ツールとしての悪用の拡大に警戒を強めている。

「仲間内でのやり取りはもっぱらこれを使っている」。ある指定暴力団幹部は、そう言ってスマートフォンの画面を指し示した。表示されていたのは「Telegram(テレグラム)」上でやり取りされたメッセージ。アプリのメッセージ機能を使って、別の指定暴力団の組員と仮想通貨の売買をめぐる情報交換が続けられていた。

この幹部によると、暴力団関係者らの間で、振り込め詐欺の手順の指示や違法薬物の売買などのやり取りにも使われているという。運営会社のホームページなどによると、テレグラムは、高度な暗号化技術で通信内容を保護できることをセールスポイントの一つにしており、現在約2億人の利用者がいるという。

暴力団関係者によると、その機密性の高さから、捜査当局への情報流出を警戒する暴力団関係者らにも浸透しつつあるとされる。米国発の「Signal(シグナル)」も、通信内容を暗号化して保護するサービスを売りにしている。

シグナルは、米国家安全保障局(NSA)による個人情報収集活動を暴露し、ロシアに政治亡命したエドワード・スノーデン元米中央情報局(CIA)職員が秘匿性の高さを評価したことで話題を集めた。暴力団幹部は「犯罪のためのツールとして、テレグラムと同様、シグナルの機密性の高さに目をつける者も少なくない」と証言する。

捜査関係者によると、警視庁が過去に摘発した特殊詐欺グループでは、被害者から現金を受け取る「受け子」に対して指示役が両アプリを通じてメッセージを送った事例が複数あった。特殊詐欺グループは受け子のほか、だまし電話をかける「かけ子」、指示役など役割分担がされており、事件捜査では捜査対象者たちの関係を立証するメッセージのやり取りが重要な物証となる。

日本で広く使われている「LINE(ライン)」はやり取りの「トーク」の履歴が残る上、履歴を消去しても技術的に復元が可能とされるのに比べ、テレグラムやシグナルでのやり取りは一度消去してしまえば復元は困難という。ある警察幹部は「秘匿性の高い通信アプリが犯罪集団に広く浸透すれば、物証を得るのが極めて困難になる」と危機感を強めている。

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