子供の半数が「会ってもいい」 SNSに潜む悪の手口

 内閣府が発表している平成29年度青少年のインターネット利用環境実態調査によると、小学生のスマートフォン所有率は29.4%、中学生では58.1%という数字になっています。今の子どもたちはデジタルネーティブです。でも、だからといって生まれながらにリテラシーが高いわけではありません。親が知らない間に見知らぬ人とつながり、トラブルに巻き込まれてしまう……。親がフィルターをかけるなどしていくら物理的に抑止をしても、つながることを防げない今、大人は何をしていくべきなのか、子どもの安全研究活動を手掛けているステップ総合研究所の清永奈穂さんにお話を聞きました。

■SNSで出会った見知らぬ人に会ってもいいと思っている子どもは50.4%

 小学校4年生から高校生までを対象にした情報セキュリティーのデジタルアーツの調査によると、SNS(交流サイト)上で知り合った友達と「会ってみたい」または「会ったことがある」と回答したのは、子ども全体で50.4%に上ることが分かりました。4~6年生の小学生男子では51.4%、4~6年生の小学生女子では56.0%という数字になり、見知らぬ人とつながることに対しての警戒心の低さが垣間見られます。子どもたちはなぜ他人とつながりたがるのでしょうか。

「どこにでもいるふつうの子どもたちの心の隙間にヒントがあります」と清永さん。

心の隙間とは、

・成績に悩みがある・友達はいるけれど、どこか満たされない・仲間に入りきれない・誰にも本音を言えない・自分に自信がない

など、現実世界での悩みです。ところが、リアルな世界では本当のことを言いにくいと感じている子どもも、会ったことのない他人になら安易に自分をさらけ出すことができてしまう。そんな傾向があり、「子どもたちは万が一傷ついたとしても『アカウントを消せば大丈夫』『名前を変えれば平気』と考えています。その気楽さからネットで知り合った他人といとも簡単につながり、深い悩みまで吐露してしまうのです」。

■悪意を持った人は巧みな手口で近づいてくる

 もちろん、ネット上の出会いがすべて悪いわけではありません。

「怖いのは、悪意を持った大人が子どもたちの心の隙間を狙い、巧みに近づいてくることです。例えばSNSを使った最近の事例としては、次のようなものがあります」

・SNSで知り合った小5の女児を誘拐した。犯人は「家出をしたい」という女児の書き込みを見て、手助けしたかったと供述している。・SNSで知り合った神奈川県の小6女児に交際を匂わせ、みだらな行為を繰り返したとして、愛知県の20代の男が逮捕された。

清永さんによると、その手口は、主に次のふたつだそう。

・性別や年齢を偽り、親近感を持ちやすい印象を与えながら近づいてくる。・何の危害も与えない相談相手や趣味を共有できる仲間だと思わせ、優しい仮面をかぶって接近し、突然脅迫するなど急変する。

「悪意を持って子どもに近づこうとしている人にとって、SNSは非常に効率のいいツールです。これまでの連載で、連れ去りなどをたくらんでいる怪しい人は必ず現地を下見しますとお伝えしました。この際、実際の連れ去りに向けて地図アプリを活用する犯罪者もいます」

「こうした人たちは、下見をしたうえで、接近しやすく、逃走経路も確保され、直感的に良いと思えば、今だ!のタイミングで犯行を遂行します。インターネットも同様に、その子どもの投稿などを確認して下見をします。興味を引く話題をちらつかせながら、優しく接近し、いつの間にか情報を巧みに吸い上げ、いつの間にか『写真を送らねばならない状況』や『会わざるを得ない状況』に子どもを追い込みます」

「ネット上で声をかければ、路上のように周りの人に怪しまれるリスクがありません。子どもが自分から近づいてくることすらあるので、犯罪者にとってはとても合理的なツールなのです」と清永さん。

ネットの世界で相談相手として会話を重ねるうち、誰にも怪しまれないまま、どんどん親しくなってしまうのです。そして、ある日、突然、現実世界で子どもの前に現れ、犯行に及ぶ。そんな「ステルス型」の犯罪が増えているといいます。

「保護者が事態に気づいたときには深刻度が増しているケースが多くなっています」というから、子どもがどんな人とつながり、どんな内容を交わしているかはぜひ、把握しておくべきでしょう。

■相次ぐ「自画撮り被害」

 警察庁の調査によると、SNSを通じて児童買春や児童ポルノなどの犯罪被害に遭った子どもは1736人、また脅されたりだまされたりして自分の裸をSNSなどで送らされる、いわゆる「自画撮り被害」に遭った子どもは480 人(平成28年 警察庁統計)に上ります。

直接の被害に遭っていなくても、運動会など学校行事の画像や動画の背景から学校が特定できるものや名札が写っているケースも多々あります。「子どもたちは、学校や個人が特定されるとどうなるかということにまで考えが及んでいないことが大半です。知らない人からの最初のアクセスは、こういうささいな情報の露呈から始まるのです」と清永さん。

実際の事例を見てみると……

・Twitter上に上げられた体育祭の写真を集められ、学校名や写真の人物名が特定されて、勝手に個人名のみならずその子どもの他の写真などがネット上で拡散された。・広島県の小学校教諭が千葉県に住む小学生女児に上半身裸の画像を撮らせ、無料通信アプリLINEで自身のスマートフォンに送らせたとして逮捕された。

男子も例外ではありません。

・静岡県湖西市の市議が当時、中学3年生だった横浜市の少年に下半身の写真を撮影させ、LINEで送信させたなどとして逮捕された。

「中学生や高校生では交際中に恋人に自分の裸の画像を送ってしまったことから後日脅され、レイプなどの被害に遭っている例もあります。他人だけでなく、近しい人との間でもトラブルや犯罪を引き起こすケースが後を絶ちません」

■合法と非合法のグレーゾーンで自分を切り売りする子どもたち

 清永さんによると最近は「腕や足など体の一部ならいいだろう」と知らない人に画像を送ってしまうということも増えているのだそう。「顔が写っていなければ大丈夫といって、子どもたちはグレーゾーンで自分を切り売りしています。『写真を送ってくれたら、レアなコンサートチケットと交換するよ』など、交換条件を提示されるケースもあります」。

子どもたちは初めは顔の写っていない上半身の写真を送りますが、「これでは足りない」と言われ、全身の写真を送る羽目になる。こんなふうに巧みに操られるケースも少なくないのです。

「たとえ近しい人であっても、自分の体を切り売りしてはいけないと教えてください。バストも性器も腕や足の一部もすべてあなたの大事な体であり、守らねばならない尊厳なんだ、ということを大人は教えていかないといけないのです」

■NOと言える子に育てよう

 フィルタリングで親が制限をかけることができても、中学生になると部活の連絡はSNSで、ということも出てきます。小学校高学年から中学校でスマホを使うのであれば、「小学校1年生くらいから、この状況はあやしい、おかしいと感じる嗅覚を育てることが大切です」。

安全教育の一番の目的は子ども自身がしっかりと自己判断、自己決定をし、自分の行動に責任を持つ力(これを大人力といいます)を持った大人にしていくことです。おかしな接近をしてくる人を見極めて、路上であろうがSNS上であろうがこちらの気持ちを無視したしつこく無理な要求、体や心を傷つけるような声掛けなどに『NO』を言える力をつけることが必要です」

でも、どうしたらそんな力をつけられるのでしょう。

「子どもたちは、うーん、まあいいか、といった曖昧な意思表示をすることで日ごろの人間関係を円滑にすることが多くあります。また『いいよ』『はい』とすべて肯定的に言えるような子育てがなされていることも多いでしょう」

「でも、危機時においては『いいえ』と言えることはとても重要です。それには、日ごろから沢山色々な人とのコミュニケーションを積み重ねること。いざというとき断ることができる力(コミュニケーション力や大人力)を作るためには、例えば『消しゴムを貸して』と言われたとき、『今は私が使っているから貸せない。でも、使い終わったらいいよ』など、普段の生活の中で実際にやり取りを経験することが大事です」

こういった経験を積むことで、理不尽に『あなたの大切なものを頂戴』と言われたときに、自分の力できっぱりと断ることができるのでしょう。

■自分も他者も大事にすることを小学生のころから心に刻ませる

 そしてもう一つ、小学校1年生くらいになったら、「自分も他者も大事にする」ということをしっかり教えてほしいと清永さんは言います。「つまり、この問題はインターネットやSNSに限った問題ではないということです。ツールを使うスキルを学ぶことも大切ですが、それ以前に日常生活の中で自分の気持ちを表現したり、相手の気持ちを慮る「コミュニケーション力」、そしてその言動がどのような結果につながるのかを想像する力を鍛えることがより重要です。相手が直接見えないインターネットの社会は、どのような情報を得たり発信したりするのか、どのように活用するのか「選択肢を並べ」、その中から「選び」、さらに炎上なども含めてその結果に「責任を負う」、まさに「大人力」が試される場なのです」。

●自分を大事にするために教えたいこと・誰かれなく、自分のアドレスや個人IDを教えない。加えて、生年月日、住所、家族、両親の名前などの個人情報は絶対に教えたり公開しないこと。・ネット上の情報は、その気になれば、誰でも盗むことができ、それがどう使われるか分からないことを知っておくこと。・情報を出してはいけないと言ってもイメージが湧かない場合、親は例えば「公衆トイレの壁に、携帯電話の番号を書くようなものだよ」「家の前に、ここにこんな子が住んでます、と写真を貼るようなものだよ」と具体的に教える。・裸を誰かに見せること、触らせることは、自分を大切にすることとは真逆であり、絶対にしないこと。・男子同士でよくある下着や性器を見せる行為は、社会規範に反すること。それを見て一緒にふざけることもよくないと認識させる。・自分が嫌だと思ったことは、はっきり「嫌だ」と言う。親は「嫌だ」と言っていいと教える。・好きな人に嫌われるから、相手の機嫌が悪くなるのが怖いからNOと言えないという場合、それは愛情とは違うことを伝える。・きっぱり断るのが難しいときは誰かに相談すること。・もしも万が一トラブルが起きた後でも遅くないので、必ず誰かに相談すること。

●自分も他者も大事にするために教えたいこと・友達から「嫌と言えない」ことを相談された場合は、一緒に伝えてあげたり、大人に一緒に相談するなど「嫌だ」と言えるように背中を押してあげることを教える。・子どもは大人に相談するよりも、子ども同士打ち明けることが多い。そのときに状況に応じて以下のように話し、友達として助ける方法があることを教える。「話してくれてありがとう。あなたは悪くないよ。その誘いは一緒に断ろう」「一緒に相談できるところに電話しよう」「裸を見せないとわかれるというのは、本当に好きな人がすることではないよ」「一緒にあなたの両親に話そう」・友達が自分一人で抱え込むのではなく、そっと支えてあげることの大切さを教える。

●加害者にならないために教えたいこと(小学校高学年~)・性別にかかわらず他者に裸の写真を送らせない。・写真を送らないと別れる、嫌いになる、何かをバラすなどの脅しはいけないことだと教える。・どんなに相手のことを好きでも、つきまとう、しつこく近寄る・触るなどはしない。・他人の個人情報(名前や生年月日、所在地、IDなど)を無断で公開しない。・人との個人的なやり取りを無断で他の人に漏らさない(LINEなどでのやり取りをスクリーンショットにして公開したりしない)。・実際に顔を合わせて話をしたほうが、コミュニケーションがスムーズにいくことも多いことを教える。・一度流した情報(例えば中傷や他人の個人情報など)は、消すことは困難であることを教える。・もし、誰かを傷つけたとしたら、一人で抱え込まず誰かに必ず相談すること。

「共働きの皆さんは仕事上でも上記のようなことに直面しているでしょう。大人になっても炎上させたり、デマに振り回されたり、トラブルに巻き込まれることは多々あり、一生かけて学ぶくらいの心構えが必要です。この学びは、子どもがこれから生きていくうえで必要な判断力やコミュニケーション力の醸成にもつながります」

「被害者にも加害者にもならないために必要なことは、子どもたちにとっては性別や立場の垣根を越えて学ぶべき大切なことではありますが、すぐに習得できるわけではありません。親たちだけが責任を担うのではなく、学校、地域などが助け合って粘り強く教えていくこと。さらに大切なことは、失敗から学ぶこと。一度や二度はトラブルが起きることを覚悟し、肝心なのは、その後どう再発させないかを一緒に考えることです」

■スマホを持たせるなら「なぜ」「何に使うか」を親子で考える

 特に小学生のうちは、顔の見えないネット上の相手に対し、「怪しい」と判断することは難しいかもしれません。

「子どもは断り方にも未熟さがあることを心に留めてください。未熟である以上、SNSのやり取りも親の目の届く範囲でやらせることが必要です。そして、便利さとともに怖さとマナーについても教えていくことが大事です」

「そのためには親子で一緒に使い、一緒に勉強していくことが重要です。例えば家族旅行の写真をSNSに投稿するか否か、するならどんな写真を、誰に見せるのかを考え、『でも、お母さんはこの写真は嫌だな。だって背景で家の住所が分かってしまうかもしれないよ。ある日、知らない人が玄関にいて、『旅行は楽しかった?』と言ってきたら怖いよね』など、親子で考えていくようにしましょう」

「子どもにスマホを持たせるにあたっては、一人で習い事に行くために持ち、帰りにお母さんお父さんに連絡するときに使うというように、『なぜ』『何のために使うのか』を明確にしておくこと。『みんなが持っているから』は主体的な理由にはなりません。『うちはうち、よそはよそ』で良いのです。そして、誰とつながるのか、ということも家庭内でしっかり決めておきます。これはスマホに限らず、キッズ携帯やニンテンドー3DSなどのゲーム類も同じです。

ルールについては最低限、次のようなことを決めておくといいでしょう」

・使っていい時間(何時から何時まで)・使っていい場所(リビングなど)・使わないときの置き場所(リビングの籠など)・ルールを守れなかったときはどうするか(次の日は使わないなど)

清永奈穂 ステップ総合研究所所長・NPO法人体験型安全教育支援機構代表理事。元警察庁科学警察研究所犯罪予防研究室長でステップ総合研究所特別顧問の清永賢二氏と共に、犯罪やいじめ、災害からどうやって命を守るかを研究している。子どもが犯罪に巻き込まれた現場に足を運んだり、元犯罪者に話を聞くなどして犯罪がどのように起きたか、どうしたら防げるかを科学的に検証し、全国で行う体験型安全教育に反映させている。海外の安全教育についても詳しい。家庭では一男一女の母。著書に『犯罪からの子どもの安全を科学する―「安全基礎体力」づくりをめざして』(共著・ミネルヴァ書房)など。ステップ総合研究所

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