熊本地震のライオンデマ、画像たどったら南アフリカで撮影者に出会った 日本の騒動「全然知らなかった」

 2016年4月に起きた熊本地震で、「ライオンが放たれた」とのデマが、無関係なライオンの画像とともにネット上に広まりました。このライオンの写真、実は私が住んでいる南アフリカで撮られたものらしい――そんなうわさを聞きつけ、出元をたどってみました。あの写真を最初にSNSに投稿した人にも取材。語られたのは意外な事実でした。

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撮影地は「世界一危ない」

 問題のツイートがあったのは2016年4月14日夜、熊本で震度7の地震が起きた約25分後。街中を歩くライオンの画像とともに「地震のせいでうちの近くの動物園からライオン放たれたんだが 熊本」と書かれていました。

これが拡散して大騒ぎに。翌15日までに熊本市動植物園の職員は100件を超える電話対応に追われたといいます。熊本県警は約3カ月後、このツイートをした神奈川県の男性(当時20)を動植物園の業務を妨害した疑いで逮捕し、発表しました。男性はその後、不起訴処分(起訴猶予)となっています。

さて、最初の手がかりはこの時の写真だけ。男性は「インターネットで入手した」とされています。

まずは情報を集めるため、地元メディアの記事などを読みこむことに。

南アフリカでもこの写真は有名らしく、ブラームフォンテンというヨハネスブルク中心部で撮られたものだと分かりました。インターネット上では「世界一危ない」とも言われるエリアです。

ただ、細かい撮影場所までは分からず、日本でウソの投稿に利用されたことを伝える記事も見当たりませんでした。

地元の人「知らなかった」

 中心部をやみくもに歩き回っても危ないので、もう一度写真をじっくり見てみることに。

すると、「JORISSEN ST」という通り名が写真の下の方に写っていることを発見。思わず「おー!」と叫んでしまいました。ここまで分かれば、あとは現場に行くだけ。携帯電話に保存したライオンの写真を通行人らに見せて、目的地にたどり着きました。

犯罪が多いエリアからは少し離れているものの、「お金をくれ」と寄ってくる人や、横断歩道を渡っていると急発進する車もあり、油断できません。

近くの衣料品店で働くツラニ・ドゥベさん(35)にライオンの写真を見せてみると、「毎日のように通る道だけど、ここにライオンがいたなんて知らなかった」と驚きの表情。

別の女性店員は驚きの余り、しばらく黙り込んだ後、「これって偽物でしょう?」と尋ねてきました。

アフリカならどこにでもライオンがいるというわけではありません。ヨハネスブルクは人口が440万人を超えるという大都会。ライオンの写真は地元の人が見てもびっくりするようです。

名前は「コロンブス」

 このライオンはどこから来たのか? 調べると、ヨハネスブルク中心部から1時間ほど離れた「ライオン&サファリパーク」という施設で飼われていたことがわかりました。

そこで施設に直接聞いてみると、「今年1月に亡くなりました」。

このライオンの名前はコロンブス。平均寿命が9~12歳のところ、19歳まで生きた長寿ライオンだったそうです。この施設で育ち、CMや映画などに出演するために訓練を受けてきました。騒動になった写真も、映画の撮影中の一コマだったようです。

あの写真を最初にインスタグラムに投稿したのは、訓練士のシャンダー・ラレンティさん(23)。周辺道路を封鎖し、通行人が誰もいない環境で撮影したそうです。

ただ、投稿した直後からネット上では、「南アフリカでは路上にライオンがうろついている」などと勘違いする人も現れたんだとか。地元メディア約10社から取材も受けたそうです。

ちなみに、コロンブスという名前に深い意味はなく、「クールだと思ったから」とのこと。南アフリカの喜望峰を通って、インドにたどり着いたのはバスコ・ダ・ガマでしたね。

「全く支持できないね」

 ラレンティさんは「まさかここまで注目されるとは思わなかった。報道もあって入場者は増えたし、商売的には良かったね」と満足そう。

ただ、日本でライオンの写真が勝手に利用され、逮捕者が出たことを伝えると、「全然知らなかった。フェイクニュースは良くないし、全く支持できないね」と言葉少なに語りました。

日本の報道を知っていたという上司のアンドレ・ラコックさんは「残念ながら、この社会は真実よりもウソのニュースであふれている。日本で逮捕者が出たのは本当に驚きだったけど、それだけ深刻な問題だということだろう」と話していました。

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