<携帯>楽天はKDDI回線借りてスタートの「勝算」

2019年10月に携帯電話事業者として新規参入する楽天は、KDDIと提携し、東名阪の都市部以外はKDDIからネットワークを借りてスタートする。果たして楽天の「勝算」は。ケータイジャーナリスト・石野純也さんの分析です。【毎日新聞経済プレミア】

◇ギブアンドテイクの関係

一方でKDDIは、楽天から決済サービスの「楽天ペイ」などの店舗網を使って、QRコード決済の「auペイ」を開始。楽天が培った物流基盤にも相乗りして、KDDIが展開している物販サービスの「ワウマ」の配送を強化する。

新規携帯電話事業者として参入する楽天だが、もともと、サービス開始当初は、他社のネットワークを借りる予定だった。全国にネットワークを張り巡らせるには時間がかかるためで、過去にも、イー・アクセス(現ソフトバンク)が携帯電話事業者として新規参入した際には、都市部以外でNTTドコモのネットワークを借りていた。

ただ、新規参入事業者への貸し出しは制度として義務化されておらず、各社ともビジネスとしてネットワークを提供している。この場合、ローミングされた分だけ、楽天からKDDIへの支払いが発生する。そのため、自前のネットワークが少ないと、ローミング料で利用者から得た収益が失われてしまう格好になる。

楽天とKDDIの提携がおもしろいのは、逆に楽天側からも、KDDIに決済や物流の基盤を提供しているところにある。一方的にローミング料金を支払うわけではなくなり、KDDIからも対価を得られるため、ローミング料をある程度相殺できる。結果として、楽天にとっては、コストを抑えられるのがメリットだ。

◇LTEメインで相性がいい

ネットワークの観点でも、楽天とKDDIは相性がいい。KDDIのスマホは、高速通信規格のLTEだけに対応している機種が多く、世代が一つ前の第3世代のネットワークに対応しなくても十分な通信エリアが構築されている。LTEだけでサービスを始める楽天にとって、利用しやすい環境だったというわけだ。

一方でKDDIは、通信の上に乗せるサービスを強化していたところだ。ただ、QRコードを使った決済サービスはドコモやソフトバンクに出遅れており、物販サービスのワウマも、楽天やアマゾン、ヤフーといった競合とは渡り合える規模になっていない。

これがソフトバンクだと、楽天側から決済基盤や物流網を借りるメリットが少ないため、楽天は一方的にローミング料を払う構図になる。サービス分野では楽天とヤフーが競合しているため、提携先としてはふさわしくなかったはずだ。格安スマホ事業者として参入していた楽天に回線を貸していたドコモとは手を組めそうだが、通信事業者で競合する会社との提携には難色を示していた。当面の全国ネットワークが必要な楽天と、決済、物販を強化したいKDDI双方の思惑が一致した結果といえるだろう。

◇料金は「まだ決まっていない」

もっとも、楽天も東名阪は当初から自前のネットワークを整備しなければならない。特に都市部や建物が多く、地下鉄網も張り巡らされているため、こうしたエリアまで整備しようとすると、権利者との交渉に時間がかかる。

楽天は「数百人体制で、基地局設置に向け、物件を保有している方に連絡を取り始めている」(山田善久副社長)というが、開始当初にどこまで電波がきっちり入るのかは不透明な部分が多い。

また楽天は、ドコモなどからネットワークを借りる、格安スマホの楽天モバイルに近い料金を提供するとしているが、具体的な金額は「まだ決まっていない」(同)。既存大手3社には政府からの値下げ要請が強まるなか、ここに楽天がどう対抗していくのかは未知数といえる。

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